通 達
令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の実施について
一般社団法人日本クレーン協会会長 殿 基安発0227第4号
厚生労働省労働基準局安全衛生部長 令和6年2月27日
 職場における熱中症予防対策については、令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」に基づく対策をはじめとして、毎年重点事項を示して、その予防対策に取り組んできたところです。また、平成29年からは「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、各災防団体等と連携して熱中症予防対策に取り組んできたところです。
 昨年1年間の職場における熱中症の発生状況(1月11日現在の速報値。別紙参照)を見ると、死亡を含む休業4日以上の死傷者数は1,045人、うち死亡者数は28人となっています。業種別にみると、死傷者数については、建設業202件、製造業220件となっており、全体の約4割が建設業と製造業で発生しています。また、死亡者数は、建設業が最も多く、製造業、警備業及び農業が同数で続き、多くの事例で暑さ指数(WBGT)を把握せず、熱中症予防のための労働衛生教育を行っていなかった。また、糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病や所見を有している事例も見られ、その多くは医師等の意見を踏まえた配慮がなされていなかった事例等も見られています。
 ついては、令和6年の本キャンペーンを、別添の令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱(以下「要綱」という。)のとおり実施します。
 貴会におかれましても、キャンペーンの趣旨を踏まえ、会員事業場等に対し、その周知を図っていただきますとともに、各事業場において確実な取組が行われますよう、特段の御配慮をお願いいたします。
 
 別途 
令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱
 
令和6年2月27日制定
1 趣旨
 夏季を中心に熱中症の発生が相次ぐ中、職場においても例年、熱中症が多数発生しており、重篤化して死亡に至る事例も後を絶たない状況にあることから、業界、事業場ごとに、熱中症予防対策に取り組んでいるところである。昨年までの「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」においても、労働災害防止団体や関係省庁とも連携し、職場における熱中症の予防に取り組んできた。
 昨年1年間の職場における熱中症の発生状況を見ると、死亡を含む休業4日以上の死傷者1,045人、うち死亡者は28人となっている。業種別にみると、死傷者数については、建設業202件、製造業220件となっており、全体の約4割がこれら2つの業種で発生している。また、死亡者数は、建設業が最も多く、製造業、警備業及び農業が同数で続き、多くの事例で暑さ指数(WBGT)を把握せず、熱中症予防のための労働衛生教育の実施を確認出来なかった。また、糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有している事例も見られ、その多くは医師等の意見を踏まえた配慮がなされていなかった。
 このため、本キャンペーンを通じ、すべての職場において、「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日付け基発0420第3号)に基づく基本的な熱中症予防対策を講ずるよう広く呼びかけるとともに、期間中、事業者は@暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を実施すること、A作業を管理する者及び労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと、B糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対して医師等の意見を踏まえた配慮をおこなうことなど、重点的な対策の徹底を図る。
 
2 期間
 令和6年5月1日から9月30日までとする。
 なお、令和6年4月を準備期間とし、令和6年7月を重点取組期間とする。
 
3 主唱
 厚生労働省、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会、一般社団法人全国警備業協会
 
4 協賛
 公益社団法人日本保安用品協会、一般社団法人日本電気計測器工業会
 
5 後援(予定)
 関係省庁
 
6 主唱者及び協賛者等による連携
 各関係団体における実施事項についての情報交換及び相互支援の実施
 
7 主唱者の実施事項
(1)厚生労働省の実施事項
ア 熱中症予防に係る周知啓発資料(チェックリストを含む)等の作成、配布
イ 熱中症予防に係る有益な情報等を集めた特設サイトの開設
(ア)災害事例、効果的な対策、好事例、先進事例の紹介
(イ)熱中症予防に資するセミナー、教育用ツール等の案内
ウ 各種団体等への協力要請及び連携の促進
エ 都道府県労働局、労働基準監督署による事業場への啓発・指導
オ その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項
(2)各労働災害防止協会等の実施事項
ア 会員事業場等への周知啓発
イ 事業場の熱中症予防対策への指導援助
ウ 熱中症予防に資するセミナー等の開催、教育支援
エ 熱中症予防に資するテキスト、周知啓発資料等の提供
オ その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項
 
8 協賛者の実施事項
(1)有効な熱中症予防関連製品及び日本産業規格を満たしたWBGT指数計の普及促進
(2)その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項
 
9 各事業場における重点実施事項
 期間中に「10 各事業場における詳細な実施事項」に掲げる取組を行うこととする。重点とすべき事項を以下に特記する。
(1)準備期間中
 暑さ指数(WBGT)の把握の準備(10の(1)のア)
作業計画の策定等(10の(1)のイ)
緊急時の対応の事前確認等(10の(1)のク)
(2)キャンペーン期間中
 暑さ指数(WBGT)の把握と評価(10の(2)のア及びイ)
作業環境管理(10の(2)のウ)
作業管理(10の(2)のエ)
健康管理(10の(2)のオ)
異常時の措置(10の(2)のキ)
(3)重点取組期間中
 作業環境管理(10の(3)のア)
作業管理(10の(3)のイ)
異常時の措置(10の(3)のオ)
 
10 各事業場における詳細な実施事項
(1)準備期間中に実施すべき事項
ア 暑さ指数(WBGT)の把握の準備
日本産業規格JISZ8504又はJISB7922に適合したWBGT指数計を準備し、点検すること。黒球がないなど日本産業規格に適合しない測定器では、屋外や輻射熱がある屋内の作業場所で、暑さ指数(WBGT)が正常に測定されない場合がある。
なお、環境省、気象庁が発表している熱中症警戒アラートは、職場においても、熱中症リスクの早期把握の観点から参考となる。
イ 作業計画の策定等
夏季の暑熱環境下における作業に対する作業計画を策定すること。作業計画には、特に新規入職者や休み明け労働者等を考慮した暑熱順化プログラム、暑さ指数(WBGT)に応じた十分な休憩時間の確保、WBGT基準値(別紙表1)を踏まえた作業中止に関する事項を含める必要がある。なお、休憩時間の確保や作業中止に関する事項の検討に当たっては、下記ウからオに基づいて実施する対策や検討結果、カからクに基づいて実施する管理等の状況を十分に踏まえたものとすること。
また、熱中症の症状を呈して体調不良となった場合等を想定した計画を策定すること。
ウ 設備対策の検討
WBGT基準値を超えるおそれのある場所において作業を行うことが予定されている場合には、簡易な屋根の設置、通風又は冷房設備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討する。ただし、ミストシャワー等による散水設備の設置に当たっては、湿度が上昇することや滑りやすくなることに留意する。また、既に設置している冷房設備等については、その機能を点検する。
エ 休憩場所の確保の検討
作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所の確保を検討する。当該休憩場所は横になることのできる広さのものとする。また、休憩場所における状態の把握方法及び状態が悪化した場合の対応についても検討する。
オ 服装等の検討
熱を吸収し又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を準備すること。また、直射日光下における作業が予定されている場合には、通気性の良い帽子、ヘルメット等を準備する。服装等の選定に当たっては、送風や送水により身体を冷却する機能をもつ服やヘルメットを採用するなど、作業中の深部体温上昇の抑制に資するものを積極的に採用する。
なお、事業者が業務に関連し衣類や保護衣を指定することが必要な場合があり、この際には、あらかじめ衣類の種類を確認し、暑さ指数(WBGT)の補正(別紙表2)の必要性を考慮すること。
カ 教育研修の実施
各級管理者、労働者に対する教育を実施する。教育は、別紙表3及び別紙表4に基づき実施する。
教育用教材としては、厚生労働省の運営しているポータルサイト「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」に掲載されている動画コンテンツ、「職場における熱中症予防対策マニュアル」、「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」、熱中症予防対策について点検すべき事項をまとめたリーフレット等や、環境省の熱中症予防情報サイトに公表されている熱中症に係る動画コンテンツや救急措置等の要点が記載された携帯カード「熱中症予防カード」などを活用する。
なお、事業者が自ら当該教育を行うことが困難な場合には、関係団体が行う教育を活用する。
キ 労働衛生管理体制の確立
事業者、産業医、衛生管理者、安全衛生推進者又は衛生推進者が中心となり、(1)から(3)までに掲げる熱中症予防対策について検討するとともに、事業場における熱中症予防に係る責任体制の確立を図る。
現場で作業を管理する者等、衛生管理者、安全衛生推進者等以外の者に熱中症予防対策を行わせる場合は、上記カの教育研修を受けた者等熱中症について十分な知識を有する者のうちから、熱中症予防管理者を選任し、同管理者に対し、(2)のクに掲げる業務について教育を行う。
ク 緊急時の対応の事前確認等
事業場において、労働者の体調不良時に搬送を行う病院の把握や緊急時の対応について確認を行い、労働者に対して周知する。
(2)キャンペーン期間中に実施すべき事項
ア 暑さ指数(WBGT)の把握
暑さ指数(WBGT)の把握は、日本産業規格に適合したWBGT指数計による随時把握を基本とすること。その地域を代表する一般的な暑さ指数(WBGT)を参考とすることは有効であるが、個々の作業場所や作業ごとの状況は反映されていないことに留意する。特に、測定方法や測定場所の差異により、参考値は、実測した暑さ指数(WBGT)よりも低めの数値となることがあるため、直射日光下における作業、炉等の熱源の近くでの作業、冷房設備がなく風通しの悪い屋内における作業については、実測することが必要である。
 地域を代表する一般的な暑さ指数(WBGT)の参照:
環境省熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp/
建設現場における熱中症の危険度の簡易判定のためのツール:
建設業労働災害防止協会ホームページ https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/ leaflet/files/heat_stroke_risk_assessment_chart.pdf
 
図 暑さ指数(WBGT)の評価と評価結果に基づく措置
 
イ 暑さ指数(WBGT)の評価
実測した暑さ指数(WBGT)(必要に応じて別紙表2により衣類の補正をしたもの)は、別紙表1のWBGT基準値に照らして評価し、熱中症リスクを正しく見積もること。WBGT基準値を超え又は超えるおそれのある場合には、暑さ指数(WBGT)の低減をはじめとした以下ウからオまでの対策を徹底する。
ウ 作業環境管理
(ア)暑さ指数(WBGT)の低減等
(1)のウで検討した暑さ指数(WBGT)の低減対策を行う。
(イ)休憩場所の整備等
(1)のエで検討した休憩場所の設置を行う。休憩場所には、氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設ける。また、水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行うことができるよう飲料水、スポーツドリンク、塩飴等の備付け等を行う。さらに、状態が悪化した場合に対応できるように、休憩する者を一人きりにしないことや連絡手段を明示する等に留意する。
エ 作業管理
(ア)作業時間の短縮等
(1)のイで検討した作業計画に基づき、WBGT基準値に応じた休憩等を行うこと。
測定した暑さ指数(WBGT)がWBGT基準値を大幅に超える場合は、原則として作業を行わないこととする。WBGT基準値を大幅に超える場所で、やむを得ず作業を行う場合は、次に留意して作業を行う。
@単独作業を控え、(1)のイを参考に、休憩時間を長めに設定する。
A管理者は、作業中労働者の心拍数、体温及び尿の回数・色等の身体状況、水分及び塩分の摂取状況を頻繁に確認する。なお、熱中症の発生しやすさには個人差があることから、ウェアラブルデバイスなどのIoT機器を活用することによる健康管理も有効である。
(イ)暑熱順化への対応
暑熱順化の有無が、熱中症の発生リスクに大きく影響することから、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を増やし、作業時間を調整し、次第に長くすることが望ましい。特に、新規採用者等に対して他の労働者と同様の暑熱作業を行わせないよう、計画的な暑熱順化プログラムを組むこと。
なお、夏季休暇等のため熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まることに留意する(※)。
暑熱順化ができていない場合には、特に(2)のエの(ア)に留意の上、作業を行う。
※暑熱順化対応例
職場での暑熱順化は暑さが本格化する前に作業時間を徐々に伸ばすなど調整し、発汗しやすい服装等で作業負荷をかけ、個人の健康状態を確認しながら7日以上かけて実施する。職場以外でも、個人の運動、入浴等日常生活で無理のない範囲で汗をかくようにすることでも可能である。
また、4日後には暑熱順化が顕著に喪失することを踏まえ、連休前に7日以上かけて身体的負荷を増やすなど暑熱順化しても、GWなどを挟む場合には、休暇中の活動状況をヒアリングするなどして、休暇中に発汗を伴うスポーツ等を行っていなかったような場合は、必要に応じ、暑熱順化期間の延長や、追加の暑熱順化を行う。
 
 
(ウ)水分及び塩分の摂取
労働者は、のどの渇きに関する自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を行う。管理者は、労働者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認、水分を常備、休憩設備の工夫などにより、労働者からの申出にかかわらず定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図る。
なお、尿の回数が少ない又は尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している状態である可能性があることを作業者へ周知する。
(エ)服装等
(1)のオで検討した服、帽子、ヘルメット等を着用する。必要に応じて、通気性の良い衣類に変更する。
(オ)プレクーリング
暑さ指数(WBGT)が高い暑熱環境の下で、作業強度を下げたり通気性の良い衣服を採用したりすることが困難な作業においては、作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑えるプレクーリングも行われており、体表面を冷却する方法と、冷水やアイススラリー(流動性の氷状飲料)などを摂取して体内から冷却する方法とがある。必要に応じて作業開始前や休憩時間中のプレクーリングを検討すること。
オ 健康管理
(ア)健康診断結果に基づく対応等
熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある次のような疾病を有する者に対しては、医師等の意見を踏まえ配慮を行う。
@糖尿病、A高血圧症、B心疾患、C腎不全、D精神・神経関係の疾患、E広範囲の皮膚疾患、F感冒等、G下痢等
(イ)日常の健康管理
当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることについて指導を行う。また、熱中症の具体的症状について労働者に教育し、労働者自身が早期に気づくことができるようにする。
(ウ)労働者の健康状態及び暑熱順化の状況の確認
当日の作業開始前に、当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状態の確認を行う。また、職長等の管理者は、入職後1週間未満の労働者及び夏季休暇等のために熱へのばく露から4日以上離れていた労働者をあらかじめ把握し、当該労働者の作業時間中や作業終了時における健康状態に特に配慮する。
健康状態又は暑熱順化の状況から熱中症の発症リスクが高いと疑われる者に対しては、必要に応じ作業の配置換え等を行う。
(エ)作業中の労働者の健康状態の確認
作業中は巡視を頻繁に行い、声をかけるなどして労働者の健康状態を確認する。また、単独での長時間労働を避けさせ、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意するよう指導するとともに、異変を感じた際には躊躇することなく周囲の労働者や管理者に申し出るよう指導する。単独作業を避けられない場合はウェアラブルデバイス導入を検討することや体調の定期連絡など常に状況を確認できる態勢を確保する。
カ 労働衛生教育
(1)のカの教育研修については、期間中においても、適切な機会をとらえて実施する。特に別紙表4に示す内容については、雇入れ時や新規入場時に加え、日々の朝礼等の際にも繰り返し実施する。
キ 異常時の措置
本人や周りが少しでも異変を感じた際には、必ず、一旦、作業を離れ、病院に搬送するなどの措置をとるとともに、症状に応じて救急隊を要請する。なお、本人に自覚症状がない、又は大丈夫との本人からの申出があったとしても周囲の判断で病院への搬送や救急隊の要請を行う。病院に搬送するまでの間や救急隊が到着するまでの間には、必要に応じて水分・塩分の摂取を行ったり、衣服を脱がせ水をかけて全身を急速冷却すること等により効果的な体温の低減措置に努める。その際には、一人きりにせずに誰かが様子を観察する。
ク 熱中症予防管理者等の業務
衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者又は熱中症予防管理者に対し、次の業務を行わせること。
(ア)作業に応じて、適用すべきWBGT基準値を決定し、併せて衣類に関し暑さ指数(WBGT)に加えるべき着衣補正値の有無を確認すること。
(イ)ウの(ア)の暑さ指数(WBGT)の低減対策の実施状況を確認すること。
(ウ)入職日、作業や休暇の状況等に基づき、あらかじめ各労働者の暑熱順化の状況を確認すること。なお、あらかじめ暑熱順化不足の疑われる労働者はプログラムに沿って暑熱順化を行うこと。
(エ)朝礼時等作業開始前において労働者の体調及び暑熱順化の状況を確認すること。
(オ)作業場所の暑さ指数(WBGT)の把握と結果の評価を行うこと。
評価結果に基づき、必要に応じて作業時間の短縮等の措置を講ずること。
(カ)職場巡視を行い、労働者の水分及び塩分の摂取状況を確認すること。
(キ)退勤後に体調が悪化しうることについて注意喚起すること。
(3)重点取組期間中に実施すべき事項
ア 作業環境管理
(2)のウの(ア)の暑さ指数(WBGT)の低減効果を再確認し、必要に応じ追加対策を行う。
イ 作業管理
(ア)期間中に梅雨明けを迎える地域が多く、急激な暑さ指数(WBGT)の上昇が想定されるが、その場合は、労働者の暑熱順化ができていないことから、プログラムに沿って暑熱順化を行うとともに、暑さ指数(WBGT)に応じた作業の中断等を徹底する。
(イ)水分及び塩分の積極的な摂取や熱中症予防管理者等によるその確認の徹底を図る。
ウ 健康管理
当日の朝食の未摂取、睡眠不足、体調不良、前日の多量の飲酒、暑熱順化の不足等について、作業開始前に確認するとともに、巡視の頻度を増やす。
エ 労働衛生教育
期間中は熱中症のリスクが高まっていることを含め、重点的な教育を行う。
オ 異常時の措置
(2)のキの措置に加え、体調不良の者を休憩させる場合は、状態の把握が容易に行えるように配慮し、状態が悪化した場合の連絡・対応方法を確認しておく。異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請する。
 
別紙
表1 身体作業強度等に応じたWBGT基準値
区 分 身体作業強度(代謝率レベル)の例 WBGT基準値
暑熱順化者のWBGT基準値 ℃ 暑熱非順化者のWBGT基準値 ℃
0 安静 安静、楽な座位 33 32
1 低代謝率 軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記);手及び腕の作業(小さいペンチツール、点検、組立て又は軽い材料の区分け);腕及び脚の作業(通常の状態での乗り物の運転、フットスイッチ及びペダルの操作)。
立位でドリル作業(小さい部品);フライス盤(小さい部品);コイル巻き;小さい電機子巻き;小さい力で駆動する機械;2.5km/h以下での平たん(坦)な場所での歩き。
30 29
2 中程度代謝率 継続的な手及び腕の作業[くぎ(釘)打ち、盛土];腕及び脚の作業(トラックのオフロード運転、トラクター及び建設車両);腕と胴体の作業(空気圧ハンマーでの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、除草、果物及び野菜の収穫);軽量な荷車及び手押し車を押したり引いたりする;2.5km/h〜5.5km/hでの平たんな場所での歩き;鍛造 28 26
3 高代謝率 強度の腕及び胴体の作業;重量物の運搬;ショベル作業;ハンマー作業;のこぎり作業;硬い木へのかんな掛け又はのみ作業;草刈り;掘る;5.5km/h〜7km/hでの平たんな場所での歩き。
重量物の荷車及び手押し車を押したり引いたりする;鋳物を削る;コンクリートブロックを積む。
26 23
4 極高代謝率 最大速度の速さでのとても激しい活動;おの(斧)を振るう;激しくシャベルを使ったり掘ったりする;階段を昇る;平たんな場所で走る;7km/h以上で平たんな場所を歩く。 25 20
注1 日本産業規格JIS Z 8504(熱環境の人間工学―WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価―暑熱環境)附属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値」を基に、同表に示す代謝率レベルを具体的な例に置き換えて作成したもの。
注2 暑熱順化者とは、「評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間、高温作業条件(又は類似若しくはそれ以上の極端な条件)にばく露された人」をいう。
注3 (参考1)身体を冷却する服の着用をしていない等、特段の熱中症予防対策を講じていない場合における「休憩時間の目安」:暑熱順化した作業者において、WBGT基準値〜1℃程度超過しているときには1時間当たり15分以上の休憩、2℃程度超過しているときには30分以上の休憩、3℃程度超過しているときには45分以上の休憩、それ以上超過しているときには作業中止が望ましい。暑熱順化していない作業者においては、上記よりもより長い時間の休憩等が望ましい。
(出典)米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の許容限界値(TLV)を元に算出。
注4 身体を冷却する服の着用等により、作業中の深部体温の上昇や休憩中の身体冷却の促進が図られるような場合 については、参考1に示した休憩時間を短縮し、又は作業中止とするWBGT値を高く設定することも可能であるが、その検討に当たっては、以下、参考2に掲げる知見を踏まえたものとすること。また、熱中症の発症や発症後の重症化の有無及び早さは個々の労働者の健康状態や作業態様によって大きく異なるため、10(2)オ(エ)に掲げる「作業中の労働者の健康状態の確認」に当たっては、周辺で作業する作業者との間で2人1組で「バディ」を組ませて声かけ等により定期的に相互の健康状態や異常の有無を確認するなどにより、熱中症の未然防止や発症時の迅速な応急措置の実施に努めることが必要である。
(参考2)
・適切な休憩の取得で体温や体液の正常化を図った上での、ファン付き作業服の着用は、作業時間を長くすることも可能である。温度30℃、湿度85%における運動実験の結果、ファン付き作業服の着用は非着用時と比較して同様の体温に到達するまで15分遅らせる効果があることがわかっている。
・同実験の結果、ファン付き作業服の着用は非着用時と比較して推定発汗量が約20%減少させる効果があることもわかっている。
 
表2 衣類の組合せにより暑さ指数(WBGT)に加えるべき着衣補正値(℃-WBGT)
組合せ コメント 暑さ指数(WBGT)に加えるべき着衣補正値
(℃-WBGT)
作業服 織物製作業服で、基準となる組合せ着衣である。 0
つなぎ服 表面加工された綿を含む織物製 0
単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服 ポリエチレンから特殊な方法で製造される布地 2
単層のSMS不織布製のつなぎ服 SMSはポリプロピレンから不織布を製造する汎用的な手法である。 0
織物の衣服を二重に着用した場合 通常、作業服の上につなぎ服を着た状態。 3
つなぎ服の上に長袖ロング丈の不透湿性エプロンを着用した場合 巻付型エプロンの形状は化学薬剤の漏れから身体の前面及び側面を保護するように設計されている。 4
フードなしの単層の不透湿つなぎ服 実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。 10
フードつき単層の不透湿つなぎ服 実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。 11
服の上に着たフードなし不透湿性のつなぎ服 12
フード 着衣組合せの種類やフードの素材を問わず、フード付きの着衣を着用する場合。フードなしの組合せ着衣の着衣補正値に加算される。 +1
注記1 透湿抵抗が高い衣服では、相対湿度に依存する。着衣補正値は起こりうる最も高い値を示す。
注記2 SMSはスパンボンド-メルトブローン-スパンボンドの3層構造からなる不織布である。
注記3 ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにその共重合体などの総称である。
 
表3 熱中症予防管理者労働衛生教育
事項 範囲 時間
(1) 熱中症の症状

・熱中症の概要

・職場における熱中症の特徴

・体温の調節

・体液の調節

・熱中症が発生する仕組みと症状

30分
(2) 熱中症の予防方法

・暑さ指数(WBGT)(意味、WBGT基準値に基づく評価)

・作業環境管理(暑さ指数(WBGT)の低減、休憩場所の整備等)

・作業管理(作業時間の短縮、暑熱順化、水分及び塩分の摂取、服装、作業中の巡視等)

・健康管理(健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理、労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認等)

・労働衛生教育(労働者に対する教育の重要性、教育内容及び教育方法)

・熱中症予防対策事例

150分
(3) 緊急時の救急処置

・緊急連絡網の作成及び周知

・緊急時の救急措置

15分
(4) 熱中症の事例 ・熱中症の災害事例 15分
注 対象者の熱中症に対する基礎知識の状況に応じ、(1)及び(2)をそれぞれ15分、75分に短縮して行うこととして差し支えない。
 
表4 労働者向け労働衛生教育(雇入れ時又は新規入場時)
事項 範囲
(1) 熱中症の症状

・熱中症の概要

・職場における熱中症の特徴

・体温の調節

・体液の調節

・熱中症が発生する仕組みと症状

(2) 熱中症の予防方法

・暑さ指数(WBGT)の意味

・現場での熱中症予防活動(暑熱順化、水分及び塩分の摂取、服装、日常の健康管理等)

(3) 緊急時の救急処置

・緊急時の救急措置

(4) 熱中症の事例 ・熱中症の災害事例

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