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玉掛け作業者の再教育について(1)
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1. はじめに
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susume03_09_01.jpgクレーン作業における災害は玉掛け作業が要因で発生していることが多く,ここ数年減少傾向にありますが依然として高い比率を占めています(図1参照).
主な原因は玉掛用具の不良,玉掛け方法の不良,合図の不良及び安全確認不足等であります.その災害防止に携わっている者として,災害発生要素を「人的」・「物的」・「管理」面から具体的に分析し,基準の見直し等対策に種々苦心を重ねられていることと思われます.
一般に,安全は繰り返し作業に関する基本事項を再度確認することからはじまり,それにより災害となる要因をできる限り減らし,安全作業を行うことが災害防止につながります.それには再教育を行うことが必要かつ大切なことです.
皆さんの職場で,過去に起きた玉掛け作業による災害及びヒヤリハット事例の原因を分析し,さらには,他の職場での災害事例等を広範囲にわたって教育ができれば予期せぬ災害を防止することにつながると思います.
今回は,『玉掛け作業者の再教育について』と題して2回に分けて掲載しますので,玉掛け作業者に対する再教育の参考にして下さい.
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2. 玉掛け作業の一般心得について
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(1) 玉掛け作業責任者について
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susume03_09_02.jpg作業を開始する前,玉掛け作業全般の責任者を選任し,責任者は関係作業者を集めて作業前に打合せを行い,作業の概要,手順等,作業全体について,全員に周知徹底させる.

(1) 玉掛け作業責任者を定めて,その指示に従うこと.
(2) 玉掛け作業責任者は作業内容,役割分担を確認し,特に複数の者が共同で作業を行う時には意思の不疎通による災害の防止に努めること

(3)

合図は統一し定められた合図により行う.また複数の作業者による共同作業の場合には合図者に腕章を着用させる等,運転者から容易に識別できるように配慮をすること.

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(2) 荷の質量目測等について
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susume03_09_03.jpg荷の質量目測や重心の見極めは,経験や勘を要する作業であり,誤った判断は作業の能率を低下させるだけでなく,重大な災害にもつながることとなる.経験が豊富な人でも質量目測は難しいので,不明な場合は関係者に確認するとか,試算する等の事前準備が必要である.

(1) 事前につり荷の質量や重心を確かめ,必要に応じつり荷に表示しておくこと.
(2) 日頃から質量目測について各自研修に心掛け,誤差が少なくなるように訓練しておくこと.

(3)

質量目測をした場合,目測質量の約20%増しを荷重と考え,玉掛け方法やつり具の選定を行うこと.

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(3) つり具について
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susume03_09_04.jpg玉掛用具の選定に当たっては,荷の質量,重心,形状,つり位置,クレーンのつり代等の確認と荷の保護について,事前に十分検討し,適切な玉掛用具を選定すること.

(1) つり具は各自が使用前に確実に点検するか,取扱い者(点検責任者)による点検済みのものを使用すること.
(2) 各種つり具,容器等には制限荷重を明記しておくこと.また,その制限荷重を超えて使用しないこと.

(3)

つり具を勝手に改善したり,製作しないこと.改造又は製作する場合は上司に連絡の上,安全確認を受けた後に行うこと.

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(4) 玉掛け方法について
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susume03_09_05.jpg玉掛け方法としては,ワイヤロープで玉掛けする方法(フックに掛ける方法,つり荷に掛ける方法)及び専用の玉掛用具で玉掛けする方法等があるが,つり荷の質量,形状及び数量や作業内容等に合わせ,最も安全で能率の良い方法を選ぶことが大切である.

(1) 1本つりは荷が回転する危険があり,また回転によってワイヤロープのよりが戻って強度が低下するので原則としてやらないこと.
(2) 小物類は出来るだけまとめ,パレット,専用容器等を使用する.

(3)

シャフト,パイプ類等滑り易いもの,脱落し易いものをつる時はコンテナを使用するか,脱落防止金具等の使用によるつり荷の落下防止を充分配慮すること.また,ワイヤロープでつる場合は,あだ巻き掛け,目通し等の絞りの効く安全な玉掛け方法を採用すること.
(4) 鋼板をつる場合は,長いもの,短いもの,幅の広いもの,幅の狭いものをそれぞれ仕分けし,混在させてつらないこと.
(5) パイプ類をつる場合は,曲がり管,直管,長いもの,短いものとそれぞれ仕分けし,混在してつらないこと.

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(5) 荷の巻上げ時の留意点
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susume03_09_06.jpg玉掛けが終わって荷を巻上げる場合はワイヤロープを緊張させた状態で玉掛け状態が良好か,玉掛用具が正しく掛かっているか荷振れのおそれがないか等を確認の後,安全な距離まで退避の上,微動巻上げの合図により静かに巻上げて,地切りした後一旦停止し,荷の安定性,玉掛け方法に間違いがないか確認する.

(1) 長尺物には介添えロープを取り付けること.
(2) 玉掛け状態が良好かどうか,確認しながらロープが張るまでは微速で巻上げを行うこと.

(3)

床上10〜20cmで一旦停止し,つり荷の安定を確認すること.また,原則としてつり荷の高さの1.5倍以上の距離まで離れておくこと.
(4) 巻上げはつり荷が他の障害物に接触しないか等に注意し,つり荷の高さは,人の高さより高くし,原則として2mのところまで巻上げる.

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(6) 運搬経路及び誘導について
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susume03_09_07.jpg玉掛け責任者,共同作業者及び周囲の作業者を含め,つり荷の下には絶対に入らない.また荷がくずれても安全な距離を保つこと.

(1) 運搬経路付近に障害物はないか,また作業者や通行人はいないか確認すること.
(2) 長尺物をつる際は,誘導ロープ(介添えロープ)をつり荷の両端に取付け,安全な位置で誘導すること.

(3)

誘導は定められた合図の方法で,クレーン等の運転者に方向を指示してからつり荷に先行して目的地へ誘導する.
(4) 人の頭上を運搬経路に選ばない.できるだけ他の作業者から離れたところを通すこと.

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(7) 荷の巻下げ時の留意点
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susume03_09_08.jpg荷の降ろし場所の周囲を整理し,まくら等を事前に配置した後にクレーンを誘導し,巻下げること..

(1) あらかじめ安全な場所や高さでつり荷の向きを修正すること.
(2) 周囲の安全,特に共同作業者の位置,退避場所等を確認して,巻下げるとき他の障害物に接触しないか等安全を確かめてから巻下げること.

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(8) 荷の着地時の留意点
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susume03_09_09.jpgクレーン等で運ばれた荷を正しく置くことは,玉掛け作業者として大切なことである.誤った積み方や乱雑な置き方は災害の原因となるばかりでなく作業の能率を低下させる.玉掛用具の取外しや,次の作業がやり易いようにとの配慮が大切である.

(1) 丸物(ボンベ,鋼管類)等,転がり易いものには転位防止のストッパー(歯止め)を両端の左右4箇所に取付けること.なお,鋼管等を複数並べておく場合には,両端だけでなく,中間にもストッパーを取付けること.
(2) ストッパーはあり合わせの木片,石等を代用しないこと.

(3)

着地前は一旦停止し,周囲の安全を確認してから微速で行うこと.
(4) つり荷を着地させる場合,重心の高い不安定なものは転倒防止の処置を完全にし,つり荷の安定を確認してからワイヤロープを外すこと.

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(9) その他の留意点
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(1)

つり荷の下には入らないこと.やむを得ず入る場合には,支柱,受け台等の安全防護の処置を完全に行ってから入ること.

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(2) つり荷の横引き,斜め引き及び衝撃つりをさせないこと.

(3)

つり荷を反転する場合,危険範囲に立ち入らないこと.
(4) ワイヤロープを握ったまま,つり荷を無理に押したり引き込んだりしないこと.
(5) ワイヤロープの当たるつり荷の角には,「あて物」をすること.
(6) 木材や精密加工したシャフト等を玉掛けする場合は,つり荷の損傷を防止するために,「あて物」を使用すること.
(7) 使用するクレーン等の性能・機能を十分理解し,斜め引き等の使い方をしないこと.

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(三井造船(株)千葉事業所 南堀正勝)

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