行 政
平成18年における死亡災害・重大災害発生状況
   
厚生労働省発表 平成19年5月11日

平成18年の労働災害による死亡者数は過去最少の1,472人
重大災害は昭和49 年以降最多の318件
製造業,建設業では死亡・重大災害ともに増加

1 死亡災害発生状況

  • 平成18年の労働災害による死亡者数は1,472人,前年比42人(2.8%)減と初めて1,500人を下回り過去最少となった.
  • 業種別にみると,建設業が508人と最も多く,次いで製造業268人,陸上貨物運送事業198人等である. 平成17年と比較すると,陸上貨物運送事業等では減少したが,製造業,建設業等では増加した.
  • 事故の型別にみると,交通事故(道路)が385人と最も多く,次いで墜落・転落353人,はさまれ・巻き込まれ189人,激突され125人,崩壊・倒壊100人等である.平成17年と比較すると,交通事故(道路)が前年比81人減と大幅に減少したが,「火災」,「崩壊・倒壊」,「激突され」,「墜落・転落」等では増加している.

2 重大災害発生状況

  • 平成18年の重大災害(一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害)は昭和49年以降最多の318件で,前年比53件(20.0%)増となった.
  • 業種別にみると,建設業が120件と最も多く,次いで製造業62件,陸上貨物運送事業20件となっている.平成17年と比較すると,陸上貨物運送事業では減少したが,製造業,建設業等では増加した.
  • 事故の型別にみると,「交通事故」が全体の約半数を占めている.平成17年と比較すると「爆発」,「中毒・薬傷」では減少したが,「火災・高熱物」,「倒壊」,「交通事故」,「その他」等では増加した.
 

3 厚生労働省の取組

 厚生労働省としては,景気の拡大等の中で安全管理が低調となっていること等から,事業者に対し必要な指導等を行うことにより,@労働安全衛生法令の遵守の徹底,A経営トップ等による安全管理のための体制及び活動の確立・充実,B職場の危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)及びこれに基づく措置の実施促進,C新規労働者への雇入れ時等の安全衛生教育の徹底,D労働災害が多発している分野における対策の徹底等を図ることとしている.
 また,7月1日〜7日の「全国安全週間」(準備期間6月1日〜30日)は,本年で80回目を迎えるが,このような状況の下,職場の安全を確保するためには,経営トップが率先して,職場における安全に対する意識や取組を再度確認し,リスクアセスメントの実施をはじめ安全管理活動を充実・強化することが重要であることから,「組織で進めるリスクの低減今一度確認しよう安全職場」をスローガンに同週間の活動を展開する予定である.

平成18年における死亡災害・重大災害発生状況の概要

1 労働災害による死亡者数の推移【図1,表1参照】

 労働災害による死亡者数は,昭和36年の6,712人をピークとして長期的には減少してきており,平成18年の労働災害による死亡者数は,1,472人と平成17年(1,514人)と比較して42人(2.8%)減少し,初めて1,500人を下回り過去最少となった.

2 死亡災害の業種別発生状況【図2,表2参照】

 業種別の死亡者数は,平成17年と比較すると,陸上貨物運送事業,商業等では減少したが,建設業,製造業等では増加した.
 建設業における死亡者数は508人で,平成17年と比較して11人(2.2%)増加した.全産業に占める割合は34.5%であり,1.7ポイント上昇し依然として最も高くなっている.
  製造業における死亡者数は268人で,平成17年と比較して12人(4.7%)増加した.全産業に占める割合は18.2%であり,1.3ポイント上昇した.
 陸上貨物運送事業における死亡者数は198人で,平成17年と比較して47人(19.2%)減少した.全産業に占める割合は13.5%であり,2.7ポイント低下した.
  商業における死亡者数は151人で,平成17年と比較して21人(12.2%)減少した.全産業に占める割合は10.3%であり,1.1ポイント低下した.

3 死亡災害の事故の型別発生状況【表3参照】

 事故の型別の死亡者数は,平成17年と比較すると,「交通事故(道路)」が81人減と大幅に減少したが,「火災」が16人増,「崩壊・倒壊」,「激突され」,「墜落・転落」がそれぞれ14人増などと増加した.
  「交通事故(道路)」の占める割合は26.2%(全産業合計の1,472人中385人),高所からの「墜落・転落」の占める割合は24.0%(全産業合計の1,472人中353人)であり,この2つの災害で死亡災害全体の50%を超えている.建設業では「墜落・転落」の占める割合が高く37.4%(建設業全体の508人中190人)である.
  製造業では「はさまれ巻き込まれ」の占める割合が高く29.5%(製造業全体の268人中79人)である.
  陸上貨物運送事業では「交通事故(道路)」の占める割合が高く61.1%(陸上貨物運送事業全体の198人中121人)である.

4 重大災害発生状況【図3,表4,5参照】

 全産業における重大災害発生件数は318件であり,昭和49年以降最多で,平成17年(265件)と比較すると,53件(20.0%)増加した.
  業種別にみると,建設業が120件,前年比27件増,製造業が62件,前年比6件増,陸上貨物運送事業が20件,前年比7件減となっている.
  事故の型別の重大災害は,「交通事故」が143件と全体の約半数を占めている.また,平成17年と比較すると「爆発」が10件減,「中毒・薬傷」が8件減などと減少したが,施設内で病原体に感染する等の「その他」が31件増,「火災・高熱物」が18件増,「倒壊」が9件増,「交通事故」が6件増などと増加している.

 

表1 業種別死亡災害発生状況(平成8年〜平成18年)

18年
(人)
構成比
(%)
17年
(人)
構成比
(%)
16年
(人)
構成比
(%)
15年
(人)
構成比
(%)
14年
(人)
構成比
(%)
13年
(人)
構成比
(%)
全産業
1,472 100.0 1,514 100.0 1,620 100.0 1,628 100.0 1,658 100.0 1,790 100.0
製造業 268 18.2 256 16.9 293 18.1 293 18.0 275 16.6 326 18.2
鉱業 16 1.1 16 1.1 16 1.0 14 0.9 17 1.0 24 1.3
建設業 508 34.5 497 32.8 594 36.7 548 33.7 607 36.6 644 36.0
交通運輸業 25 1.7 31 2.0 36 2.2 32 2.0 35 2.1 32 1.8
陸上貨物運送事業 198 13.5 245 16.2 243 15.0 241 14.8 234 14.1 241 13.5
港湾荷役業 14 1.0 11 0.7 10 0.6 12 0.7 15 0.9 18 1.0
林業 57 3.9 47 3.1 46 2.8 61 3.7 49 3.0 54 3.0
その他 386 26.2 411 27.1 382 23.6 427 26.2 426 25.7 451 25.2


12年
(人)
構成比
(%)
11年
(人)
構成比
(%)
10年
(人)
構成比
(%)
9
(人)
構成比
(%)
8
(人)
構成比
(%)

18年対8年
の減少数
(減少率)

全産業
1,889 100.0 1,992 100.0 1,844 100.0 2,078 100.0 2,363 100.0 891人減(37.7%減)
製造業 323 17.1 344 17.3 305 16.5 351 16.9 405 17.1 137人減(33.8%減)
鉱業 26 1.4 24 1.2 29 1.6 40 1.9 32 1.4 16人減(50.0%減)
建設業 731 38.7 794 39.9 725 39.3 848 40.8 1,001 42.4 493人減(49.3%減)
交通運輸業 29 1.5 29 1.5 47 2.5 38 1.8 36 1.5 11人減(30.6%減)
陸上貨物運送事業 271 14.3 270 13.6 225 12.2 290 14.0 333 14.1 135人減(40.5%減)
港湾荷役業 11 0.6 10 0.5 19 1.0 17 0.8 28 1.2 14人減(50.0%減)
林業 53 2.8 71 3.6 69 3.7 56 2.7 80 3.4 23人減(28.8%減)
その他 445 23.6 450 22.6 425 23.0 438 21.1 448 19.0 62人減(13.8%減)

 

 

表2 平成18年における死亡災害発生状況
種業 平成18年 対17年比較
年死亡者数(人) 構成比(%) 増減数(人) 増減率(%)
全産業 1,472 100.0 −42 −2.8
製造業 268 18.2 12 4.7
鉱業 16 1.1 0 0.0
建設業 508 34.5 11 2.2
交通運輸事業 25 1.7 −6 −19.4
陸上貨物運送事業 198 13.5 −47 −19.2
港湾荷役業 14 1.0 3 27.3
林業 57 3.9 10 21.3
その他 386 26.2 −25 −6.1

業種欄「その他」 平成18年 対17年比較
年死亡者数(人) 構成比(%) 増減数(人) 増減率(%)
畜産・水産
16 4.1 −2 −11.1
商業 151 39.1 −21 −12.2
金融・広告 8 2.1 −2 −20.0
信通 8 2.1 1 14.3
接客・娯楽 24 6.2 7 41.2
清掃・と畜 54 14.0 −5 −8.5
上記以外(教育研究,
保健衛生,警備等)
125 32.4 −3 −2.3
(注) 1 死亡災害報告より作成したもの
2 「−」は減少を示す.

 

表4 平成18年における重大災害発生状況
業種 平成18年(1月〜12月) 増減数平成17年(1月〜12月) 増減数
件数(件) 死傷者数(人) 死亡者数(人) 件数(件) 死傷者数(人) 死亡者数(人) 件数(件) 死傷者数(人) 死亡者数(人)
全産業 318 2,117 85 265 2,286 68 53 −169 17
製造業 62 431 7 56 388 8 6 43 −1
鉱業 0 0 0 0 0 0 0 0 0
建設業 120 543 45 93 419 21 27 124 24
交通運輸業 11 116 5 10 44 6 1 72 −1
陸上貨物運送事業 20 95 10 27 110 24 −7 −15 −14
港湾荷役業 1 3 0 0 0 0 1 3 0
林業 1 3 3 0 0 0 1 3 3
その他の事業 103 926 15 79 1,325 9 24 −399 6
(注) 1.重大災害報告より作成したもの
  2.一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害事故について作成.
  3.「−」は減少を表す
  4.被災者が属する業種が複数にまたがる場合には,主たる業種についてのみ計上している.

 

(掲載:『クレーン』第45巻 7号 2007年)

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