通 達
熱中症による死亡災害発生状況(平成18年分)について
都道府県労働局労働基準部労働衛生主務課長殿 基安労発第0510001号
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長 平成19年5 月10日

熱中症による死亡災害発生状況(平成18年分)について

 熱中症の予防については,平成8年5月21日付け基発第329号「熱中症の予防について」等によりその対策が示されているところであるが,平成18年における熱中症による死亡災害の発生状況を別添のとおりとりまとめたので,これを参考に熱中症の予防対策の徹底に努められたい.

別添
熱中症による死亡災害発生状況
1 熱中症による死亡者数の推移(平成9〜18年分)
  過去10年間の熱中症による死亡者数の推移を見ると,平成11年からは毎年20名前後の死亡災害が発生しており,平成18年も17件の死亡災害が発生している.
熱中症による死亡災害発生件数の推移(平成9〜18年分)
年(平成) 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年
発生件数 15 10 20 18 24 22 17 17 23 17

 

2 月別被災状況(平成16〜18年分)
  月別の被災状況をみると,例年7月から8月に集中して発生している.平成18年においても,1件を除き7月又は8月に死亡災害が発生している.
月別被災状況(平成16〜18年分)
5月 6月 7月 8月 9月
平成16年 0 1 12 3 1 17
平成17年 1 3 8 6 5 23
平成18年 0 1 8 8 0 17
1 5 28 17 6 57

3 時間帯別被災状況(平成16〜18年分)
  時間帯別の被災状況をみると,午後2時から午後4時台の間に多発している.平成18年においても,午後3時台の発生が半数を超えている.比較的症状が軽い段階で手当するためにも,熱中症の発生が多発している時間帯も含め,熱中症の症状を呈している者がいないか,十分確認することが求められる.
時間帯別被災状況(平成16〜18年分)
時間帯 9時台 10時台 11時台 12時台 13時台 14時台 15時台 16時台 17時台 18時台以降
平成16年 0 0 3 0 2 4 5 1 2 0 17
平成17年 0 3 2 3 1 3 3 5 1 3 23
平成18年 0 0 1 1 1 3 9 2 0 0 17
0 2 6 4 4 10 17 8 3 3 57

4 被災者の年代別被災状況(平成16〜18年分)
  被災者の年代別の被災状況をみると,30代〜50代が多いものの,平成18年においては,20代の被災者も4人いる.中高年齢層だけでなく若年層に対しても熱中症予防対策を適切に講じることが必要である.
被災者の年代別被災状況(平成16〜18年分)
年代 10代 20代 30代 40代 50代 60代以上
平成16年 1 2 1 6 6 1 17
平成17年 0 1 9 3 7 3 23
平成18年 0 4 4 2 7 0 17
1 7 14 11 20 4 57

5 業種別被災状況(平成16〜18年分)
 業種別の被災状況をみると,建設業が圧倒的に多い.平成18年においては,林業や屋外作業が伴う製造業等の業種でも発生しており,また,建設業であっても,工事現場以外の場所で発生している例があることに注意を要する.
業種別被災状況(平成16〜18年分)
業種 建設業 運送業 警備業 製造業 林業 鉱業 清掃 その他
平成16年 13 0 1 3 0 0 0 0 17
平成17年 13 2 0 4 0 0 0 4 23
平成18年 14 0 0 1 1 0 0 1 17
40 2 1 8 1 0 0 5 57

6 作業日数別被災状況(平成16〜18年分)
  作業日数別の被災状況をみると,作業開始から数日の間に発生しているのがほとんどである.平成18年においては,初日又は2日目に集中して発生している.高温環境下で作業を行う場合には,労働者に対し,作業開始前の教育や健康状態の確認等を十分行うことが重要である.
作業日数別被災状況(平成16〜18年分)
作業日数 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目以降 不明
平成16年 5 6 2 0 1 0 0 0 0 2 1 17
平成17年 4 7 4 3 2 0 0 0 1 2 0 23
平成18年 6 8 0 0 0 0 0 0 0 3 0 17
15 21 6 3 3 0 0 0 1 7 1 57

7 その他
(1) 熱中症と疑われる症状が現れているにもかかわらず,関係者の認識不足等により,対応が不十分であった例が認められる.また,一人行動のため,熱中症の発症に気づかれることなく時間が経過し,発見されたときにはすでに死亡している例が認められる.
  あらかじめ作業者全員に対し,救急措置を含む労働衛生教育を確実に実施するとともに,作業場所の巡視をこまめに行い,労働者の健康状態を確認することが大切である.
(2) 適切な休憩設備が確保されていなかった例が認められる.
  あらかじめ,日除けや通風をよくするための設備を設置し,涼しい場所に休憩場所を確保しておくことが重要である.
(3) 作業場所にスポーツドリンクを備え付ける等の措置が講じられていない例が認められる.また,その補給に関する指導が十分行き届いていない例が認められる.
  スポーツドリンクを備え付ける等のほか,その補給について労働者に対して指導徹底することが必要である.
 
 本欄に掲載する通達等の内容の詳細については,厚生労働省又は安全衛生情報センター(中災防)のホームページをご参照下さい.(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/,安全衛生情報センター:http://www.jaish.gr.jp/menu2.html)なお,同ホームページへは当協会のホームページの外部リンクからもアクセスできます.(日本クレーン協会:http://www.cranenet.or.jp/)

(掲載:『クレーン』第45巻 8号 2007年)

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