通 達
移動式クレーンの構造部分に使用する鋼材について
都道府県労働局長殿 基発第0330014号
厚生労働省労働基準局長 平成19年3月30日

移動式クレーンの構造部分に使用する鋼材について

 標記について,香川労働局長からの別紙甲の照会に対し,別紙乙のとおり回答したので了知されたい.

別紙甲
香労発基第0754号
平成18年9月1日
厚生労働省労働基準局長殿
香川労働局長
移動式クレーンの構造部分に使用する鋼材に係る照会について
 標記について,当局管内の事業場から移動式クレーンの構造部分に使用する下記の材料を使用してよいか照会がありました.これについて,移動式クレーン構造規格第1条ただし書きの「厚生労働省労働基準局長が認めた場合」として,移動式クレーンの構造部分に当該鋼材の使用を認めることとしてよろしいかお伺いします.
1.使用する鋼材の種類
  120キロ級高張力鋼板
  TNHT 1180R(新日本製鐵株式会社製)
  TNHT 1180P(新日本製鐵株式会社製)
2.使用する鋼材の化学成分及び機械的性質等
 別添のとおり
別添
1.機械的性質
1-1 降伏点,引張強さ,伸び,曲げ
鋼材の記号
降伏点
N/mm2
引張強さ
N/mm2
伸び(注1) 曲げ試験
内側半径
(注2)
鋼厚mm
TNHT1180P 1100以上 1180以上 ≦16
>16
>20
≧11
≧17
≧11
4.0t
TNHT1180R 1100以上 1180以上 ≦6
>6
≧6
≧9
4.0t
注(1)試験片方向:圧延方向に直角.試験片形状:JIS5号及びJIS4号.
  (2)曲げ角度:180度.試験片方向:圧延方向に直角.試験片形状:JIS1号.
 
1-2 衝撃値
鋼材の記号
板厚
mm
試験温度
平均吸収エネルギー
J(注3)
試験片サイズ
mm(注4)
TNHT1180P ≧8 -40 ≧Av 14
≧Av 20
≧Av 27
10×5.0
10×7.5
10×10
TNHT1180R ≦7 -40 ≧Av 14 10×5.0
注(3)Avは試験片3個以上の平均値.
  (4)試験片形状:JIS4号.
 
2.化学成分                                                       (単位:%)
鋼材の記号 C Si Mn P S Cu Ni
TNHT1180P ≦0.20 ≦0.55 ≦2.00 ≦0.025 ≦0.020 ≦0.30 ≦1.20
TNHT1180R ≦0.20 ≦0.55 ≦2.00 ≦0.025 ≦0.020 ≦0.30 ≦0.30

 

鋼材の記号
C Mo Nb V Ti B Ceq
TNHT1180P ≦1.20 ≦1.20 ≦0.05 ≦0.10 ≦0.30 ≦0.005 ≦0.75
TNHT1180R ≦0.30 ≦0.80 ≦0.05 ≦0.10 ≦0.30 ≦0.005 ≦0.63
注(1) Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
 
別紙乙
基発第0330013号
平成19年3月30日
香川労働局長殿
厚生労働省労働基準局長
移動式クレーンの構造部分に使用する鋼材について
 平成18年9月1日付け香労発0754号をもって照会のあった新日本製鐵株式会社製TNHT1180R 及びTNHT1180P(以下「申請材」という.)に係る標記については,貴見のとおり取り扱うこととするので通知する.
なお,申請材の移動式クレーン構造規格(以下「規格」という.)における取扱い等について下記のとおり定めるので留意すること.
 許容応力について
 規格第5条の規定に基づき,申請材に係る許容応力の値は,規格第3条第1項及び第2項の規定によって求めた値とすること.
 なお,規格第3条第2項に示す座屈係数については,同項の中の「厚生労働省労働基準局長が認めた計算の方法により計算して得た値」とすること.
 溶接部の許容応力について
 規格第5条の規定に基づき,溶接部に係る許容応力の値は,規格第4条第1項において「鋼材の種類」をB として,求めた値とすること.
 溶接施工法について
 規格第38条第2項の規定に基づき,申請材の溶接については,溶接棒は,鋼材メーカーの推奨する低水素系の溶接棒を用い,鋼材メーカーの溶接要領に従った予熱及び入熱管理を行うこと.
 疲れ強さについて
 申請材の使用に当たっては,母材及び溶接部位の疲れ強さに対する安全性を強度計算等により確認すること.
 製造検査等における留意事項
 製造検査又は使用検査においては,申請材を使用している箇所の溶接施工法を確認するとともに,製造者が行った溶接検査の結果を確認すること.また,クラックの発生の有無について入念に検査すること.
 また,性能検査等においても,溶接による補修が行われている場合には,補修後に行われた磁気または超音波等による溶接状態の検査の結果を確認すること.さらに,繰り返し応力によるクラックの発生の有無について入念に検査すること.
  編注)本欄に掲載する通達等の内容の詳細については, 厚生労働省又は安全衛生情報センター(中災防)のホームページをご参照下さい.(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/,安全衛生情報センター:http://www.jaish.gr.jp/menu2.html)なお,同ホームページへは当協会のホームページの外部リンクからもアクセスできます.(日本クレーン協会:http://www.cranenet.or.jp/)

 

(掲載:『クレーン』第45巻 5号 2007年)

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